年齢=障害者家族歴な主婦のドタバタのほほん日和

重度自閉症者のきょうだい児として育ち、結婚後は軽度知的障害児二人の母になりました。障害支援分野でNsをやっています ☆

【他人との関りに困難を持つ子 必見】3歳前後の社会性発達18の流れと6つの課題特徴

皆さんこんにちは。今回は3歳児の社会性についてお話したいと思います。

3歳頃というと、他人との関係に大きな変化が表れる時期です。

大きな変化・・・それはズバリ、おともだちの出現です!

 

おともだちの出現が社会性の発達に大きな影響を与える

「おともだち」・・・それまでは主に保護者や保育者と行動を共にしたときに、保育園や公園、児童館で並んで同じような遊具を使って遊ぶ程度の感覚であったことでしょう。

まだまだ直接遊ぶ相手は大人であり、「おともだち」はそばで一緒に楽しそうに遊んでいる子、みたいな。

この頃は「おともだち」の存在以前に自分が気になることや楽しめる遊びに安心してじっくり取り組むことが重要です。

じっくり取り組むことにより「楽しさ」や「面白さ」をたくさん知ることにより、その後にそれを他人に伝えたり共有できるようになるのです。

そう、その他人がまさに「おともだち」なのです! 

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 また↑↑↑の記事でお子さんへの共感の言葉かけについてお話ししましたが、この時期はこれまでに培われたお子さんなりの共感力を、好きな遊びを通しておともだちと「楽しさを共有する」ことで発揮します。

おともだちと楽しさを共有し「面白い」「好き」の共感力や気持ちを自分の中でさらに大きく広げていくことにより、今後の長い人生において多くの人と関り生きていく術を身につけ始めるのです。

以前、障がいを持つお子さんへの相談支援を担当していた時に親御さんから「おともだちと仲良く遊べるようになってほしい」という気持ちを伺うことがよくありました。

この場合、まずはお子さん自身が「遊んでいるおともだちに興味を示すことはあるか?」「楽しいという気持ちを共有して活動できる子が周囲にいるか?」「一時的に遊び相手がいる場合もどちらか一方が遊びのやり方を決めて、もう一方が言うことを聞くような遊び方をしていないか?」ということから着目するようにしていました。

幼児期の遊びの観点で考察すると、製作など集中した一人遊びは、年齢的にふさわしい時期がある。しかし協同的な遊びが年齢に適した姿となる年長児になると、非社会性の兆候として負の作用をもつ。うろうろしたり、ぼーっとしたり、他児が遊ぶのを見ているだけの状態は、気質的な内気さを背景としていて、低年齢の頃から一貫して不適応のサインとなりうる。一人で意味もなく走り回っていたり、ジャングルジムをずっと上ったり降りたりしていたりする姿は、衝動性など制御の問題との関連が示唆され、内気さゆえに集団参加が少ない典型的な引っ込み思案とは異なる発達上の兆候を示すのかもしれない。
http://www2.lib.yamagata-u.ac.jp/kiyou/kiyoued/kiyoued-15-4/image/kiyoued-15-4-009to023.pdf#search='%E4%B8%89%E6%AD%B3%E5%85%90+%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E6%80%A7+%E9%81%8A%E3%81%B3+%E7%A0%94%E7%A9%B6'より引用

POINT

①少人数での〇〇ごっこやかくれんぼ等の遊びを通して友達意識が芽生える

②「好き」の心が広がる

③「好きなこと」を共有したり、「好きな子」と同じように遊びたがるようになる(仲間の発見)

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またこれまでは対人関係と言えば主に親などの保護者や保育者が対象でしたが、おともだちという対象が加わることにより今まで通用していたコミュニケーション方法が通じなくなり様々な壁にぶつかることが考えられます。

お母さんやお父さん、お祖母ちゃんやお祖父ちゃん、保育園などの先生たちは、お子さんの良いものもそうでないものも含め「まだ言語化できない気持ち」を様子から察し、尊重しながらより良い方へ導くことを繰り返し行ってくれていました。

そのお陰で子どもたちは両者の関係の中で、大人に対する信頼感や安心感を獲得することができたのです。

しかしこれからは少しずつ、その範疇外の「子ども」を相手にしていかなければならないのです。

この相手はこれまでのように「まだ言語化できない気持ち」を察してくれる能力はありません。

そこで、楽しく遊ぶためには先ず多くの言葉を自分から発してアピールしなければならないのです。

保育所や幼稚園で、子どもたちは、子ども同士のかかわりの場面や集団活動の場面などにおいて、自分の欲求通りには事が進まないさまざまな葛藤を経験する。そして、その経験を通して、自己を抑制したり、主張したりする力を身につけていく。このように、状況に応じて、自己の情動や行動を制御する機能は、自己制御機能と言われる。幼児期後期は、自己制御的活動を大人から導かれたりサポートされたりすることが必要である 2歳代までとは異なり、真の内的自己制御の能力を増加させる時期Kopp,1988)であり、かつ、大人からも適切に情動や行動を制御することの期待が高まる時期とされている(Bronson,2000)。https://gair.media.gunma-u.ac.jp/dspace/bitstream/10087/3010/1/p169.pdf#search='%E8%87%AA%E5%B7%B1%E4%B8%BB%E5%BC%B5+%E5%B9%BC%E5%85%90+%E7%99%BA%E9%81%94'より引用

おともだちに、なんて声をかければ良いか分からない様子のお子さんにはそばにいる大人が教えてあげましょう。

そうです。「いーれーてー」や「あーそーぼー」の始まりです。

そして一緒にごっこ遊び等を行っていくうちに「かーしーてー」「どーうーぞー」「ありがとう」等、おともだちと仲良く遊ぶコツなども獲得していきます。

しかし当然ですが定型発達児であっても障がい児であっても、まだルールへの意識や感情表現や解釈が未熟である為におともだちとトラブルが生じやすいです。例えば「順番」を意識しても並び方がバラバラだったり・・・。

それが普通の時期なので、きちんと大人がそばについて関わり方を調整してあげましょう。

大人が関わり方の調整をしてあげることで社会生活がよりスムーズになり、おともだちとの共感や楽しさの共有場面を増やすことができます。

保育の場では保育者による遊びの介入が,幼児の遊びの成立に対し「足場づくり」(Bruner,1983)の役割を果しており(例えば,高濱,1993;田中,2007 など),「気になる」子どもが独自の力では遊びを共有できない場合でも,保育者の働きかけによっては「気になる」子どもが遊びを共有することが可能となる。

http://www.coder.or.jp/hdr/22/HDRVol22.14.pdf#search='%E4%B8%89%E6%AD%B3%E5%85%90+%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E6%80%A7+%E9%81%8A%E3%81%B3+%E7%A0%94%E7%A9%B6'より引用

POINT

④「入れて」が言える

⑤共通の玩具を用いて「どうぞ」「ありがとう」ができる

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大人は子どもたちの様子を見ながら遊びのルールや時にはその内容も決めたり、間に休憩や食事、トイレ等、その都度必要な日常生活動作の実施をするように主導します。

子どもはその経験を積むことにより、大人に見守られた生活のなかで「おともだちと遊ぶことは楽しい」と感じ、さらに活動の場を広げ社会性を磨いていきます。

そのなかで「決定権を持つ大人と一緒にいると、より安心して安全におともだちと遊べる」と実感します。

子どもはその安心感のもとでさらに自らを奮い立たせ、戸惑ったり壁にぶつかる経験を重ねながらも前向きに自分の力を信じて、おともだちとともにその世界を広げていくのです。

家庭外の大人との関わりも重要である。特に幼稚園・保育園において、子どもが遊ぶ場を作る保育者の役割は、幼児期の引っ込み思案の克服において重要である。遊びを見つけられない状態の子どもに対して、子ども本人が楽しめ集中できる遊びを見つけられるようにするための保育者の役割は、まず、子どもに安心の状態をサポートすることであるといえる。保育者自身の存在が子どもにとっての“安心の基地”になることや、落ち着ける場作りなどが考えられる。その上で、子どもの興味を見取り、遊びの素材や場を提供して、子どもが自分で「遊べる」ようにサポートする。実際に保育の実践を見ると、自由遊びの時間に一人でぼやっとうろうろしている子どもが、保育者の継続的な見取りと働きかけによって自分で「遊べる」ようになると、遊びを介して友だちとのつながりも出てくる事例が見受けられる。

http://www2.lib.yamagata-u.ac.jp/kiyou/kiyoued/kiyoued-15-4/image/kiyoued-15-4-009to023.pdf#search='%E4%B8%89%E6%AD%B3%E5%85%90+%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E6%80%A7+%E9%81%8A%E3%81%B3+%E7%A0%94%E7%A9%B6'より引用

POINT

「決定権」などの大人の役割に気付く

⑦こどもと大人の役割の違いに気づく

⑧大人や友達と遊びや行動を共にしながらルールを守る経験を積む

⑨友達と協同して遊びながら、自分の考えが絶対ではないことに気付き始める

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そうこうしているうちに、段々とおともだちに対しても言葉で自己主張をできるようになっていきます。

まだこの時期はおともだちに使用している玩具を取られたら言葉ではなく行動(時に叩く等の攻撃)で取り返そうとすることが多いと思いますが、関りの中で「いま使っているの」や「返して」と言葉で表現し、攻撃や拒絶以外の方法で自分で伝えようとすることが少しずつ増え始めるのです。

戸田・高野(2004)は、自己主張も自己抑制も 3歳(年少児)から 4歳(年中児)にかけて伸びが大きく、5歳(年長児)以降はさほど大きく変化しないのではないかと推察されるとしている。

https://gair.media.gunma-u.ac.jp/dspace/bitstream/10087/3010/1/p169.pdf#search='%E8%87%AA%E5%B7%B1%E4%B8%BB%E5%BC%B5+%E5%B9%BC%E5%85%90+%E7%99%BA%E9%81%94'より引用

 

 幼児期になると子どもは仲間との対等な関係において,互いの要求のぶつかりあいを経験することによって,徐々に対人スキルを身につけていく。自己主張とは,「他人の権利を侵害することなく,個人の思考と感情を,敵対的でないしかたで表現できる能力(Deluty,1979;濱口,1994)と定義され,発達途上にある子どもが獲得すべき社会的能力のひとつであるといえる。

file:///C:/Users/%E3%81%BF%E3%81%9A%E3%81%9F%E3%81%BE/Downloads/KJ00005976359%20(2).pdfより引用

また言葉での主張が増え始めると共に、自分の考えや言い訳も話し始めます。但しそれはまだまだたどたどしく矛盾が目立ち周囲に理解されないことも多く、大人の介入が必須です。おともだちも同じように自分の考えなどを主張するので、おともだちにはおともだちなりの考えがあることを遊び経験を通して理解していきます。こちらも今後の発達や社会生活の進展と共に目覚ましい成長を見せてくれることでしょう。

POINT

⑩自己主張が強くなる

⑪「寂しい」を表現する

⑫言い訳が出来るようになり始める

⑬「どうやるの?」に対し自分の考えを説明する

⑭「好き」の感情に気付き共有すると共に、相手には相手の気持ち・考えがあることを理解する

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そしておともだちや大人との関りの中で、大人から「〇〇できてすごいね」「△△だからえらいね」と自分に声を掛けられたりおともだちが褒められる場面に何度も遭遇します。

みんなの前で褒められればうれしいのでもっと褒めてほしくなります。

おともだちが褒められる場面を見て、これまで共感力や共有力を育んできたお子さんは「〇〇君はすごいな」「〇〇ちゃんはえらいな」と、これまで気にかけることのなかった「おともだちの素敵な部分」に目を向けられるようになり始めます。

この感覚のスタートが、今後の社会生活で自分や相手を認めたり、憧れを抱いたり、目標に向かって頑張ること等に絶大な影響を与えます。

POINT 

⑮承認欲求が高まる

⑯他人に対する見方が成長する

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承認欲求の上昇により、困った一面も見られるようになります。

それはズバリ、よく言う「いじわる」です。

但しこれは「いじめ」のように陰湿さや悪意が根底にある複雑なものではありません。

そこには「自分の欲求を満たしたい」「自分を見てもらいたい」という自分本位な気持ちが見え隠れすることがあります。そして「〇〇されたら嫌な気持ちになるはず」という相手の感情を考える能力が十分に育っていない場合によく見られます。

発達の一過程として“いじわる”が見られることも。子どもにはその成長過程で、「やりたい」「認められたい」「友だちより優位に立ちたい」といったさまざまな思いが育ちますが、それをまだうまくコントロールできないため、“いじわる”とも見える自分本位な行為をしてしまうことがあるのです。

https://mywonder.jp/idea/5601より引用

おともだちとの社会生活の中で様々な経験を積み揉みに揉まれて良い気持ちもそうではない想いも互いに経験し合うことにより、子どもはこれらを段々とコントロールできるようになります。

しかしいじわる行動が長期間に及ぶ場合は、その行動はいけない行動であり相手や周囲の人は嫌な気持ちになることや自分も怒られて結局嫌な思いをすることをきちんと教えた上でこれ以上はしないように言い聞かせましょう。

高まる承認欲求を満たしたい子どもにとってはこのような注意には不快感を感じるでしょうが、信頼し決定権を委ねる大人の言葉ならば耳を傾ける可能性が高いです。

そして承認欲求が満たされず、小学校入学以降もおともだちへのいじわる行動が長引くと社会生活で重大な不適応を示す場合もあります。

下記に例を述べますが、この状況は自分自身も周囲の人も強い苦しみや痛みを感じることがある為なるべく避けたいです。

この時期は多かれ少なかれいじわる行動が見られるという点も含めて、お子さん自身の行動や言動、おともだちとの関わり方については大人がしっかりと見守り介入する必要があるのです。

POINT

⑱いじわるが始まる

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この時期の社会性の発達に課題が見られるお子さんの特徴

①周囲の子の遊びに興味を示さない

②おともだちの存在に興味を持たない、おともだちの名前を覚えようとしない

③ルールを守ったり譲ることができない

④大人からの決定や調停に応じない

⑤突拍子なく大声をあげたり不可解な動作をし周囲の注目を集めようとする

⑥大人同士の会話に無理やり入ってきて、会話の中心的存在になろうとする

しかし・・・

本郷(2007)は「気になる」子どもがルール遊びをすることを通じ,他児と関わる経験や他児と楽しい時間を過ごす経験を積み重ねる中で,「気になる」子どもや他児の社会性の発達が促されるとしている。保育者の対象児に対する「気になる」評価のうち「集団活動」や「ルール違反」において減少が見られたことからも,遊びを通じた社会性の発達は,単に遊びの中だけに限定されるものではなく,相互に関連しあっているものであると思われる。

http://www.coder.or.jp/hdr/22/HDRVol22.14.pdf#search='%E4%B8%89%E6%AD%B3%E5%85%90+%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E6%80%A7+%E9%81%8A%E3%81%B3+%E7%A0%94%E7%A9%B6'より引用

上記研究の結果から、大人が介入することによりこれら課題を持つお子さんの社会性も向上することが明らかになっています。

大事なのは、その大人から子どもの様子がきちんと見えること。

なぜなら園児数が多いマンモス園よりは小規模園で且つ園児に対して対応する先生の人数が多いところの方が子どもひとりひとりの様子に目が行き届き「気になる点」に気付きやすく、集団の小ささから支援しやすいのです。

特に「自分をもっと見てほしい!」というような承認欲求が強いお子さんは、その後にこの傾向が和らいでいく可能性が大きいです。

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おともだちが欲しいけどいじわる行動を繰り返してクラスメートに受け入れられない小学生Aちゃんの例

これは、私が実際に相談支援業務を通して知り合った女の子のお話です。

彼女は小学校低学年。お話も勉強もよくできる賢い子でした。入学後は積極的にお友達に話しかけていました。おともだちと遊びたくて自分から集団の中に「入れて」と言って入っていくことも出来ました。しかし2年生の終わり頃から「友達がいないから学校がつまらない」という理由で登校拒否傾向が見られるようになってきました。

そこで親御さんと共に児童精神科医の元を訪れ、その後社会支援を受けるために私が勤務する事業所に相談にやって来ました。

その後多職種とのカンファレンスを重ねた結果、彼女は物おじせずに私が設定した集団療育の場に入っていったのですが、そこでの行動が実に承認欲求の未充足による社会への不適応の原因を表していたのです。

先ずはAちゃんが安心して活動を出来るように支援者となる大人との関係作りから始めました。しかし一緒に制作活動をすれば支援者が作った制作物を、作った本人の顔を見ながら笑顔で踏みつぶしました。

その後支援者が他のお子さんの支援に当たっていると、自分も同じことをやりたいと利用している遊具を問答無用で取り上げようとしました。そこで少し待つように支援者が伝えるも「なんで?」「私が先にやりたいの」の嵐。しかしAちゃんは社会的ルールをしっかりと理解しているお子さんなのです。大人同士で「この間路駐の車がいてさ~」と小声で少し愚痴を話せば「ナニナニ何の話~?誰がいけないことしたの~?」と、大きな声で割り込んできては社会の様々なルール違反についてよく怒っていました。本当は自分もルールを守って待たなければいけないことを分かっていたのです。また、おともだちが活動に取り組んでいる様子を見て「自分の方がうまい」と言ったり、おともだちと活動を続けている支援者の方を見ながら突然大きな奇声をあげ、目があえば嬉しそうな表情を見せたりもしていました。そして数分待った後に順番が回ってきて譲ってもらえると、1分も使用せずにあっさり「もういい」と。

そんななかでも支援者を介せば遊べるおともだちが次第に現れてきました。しかしそのおともだちが「あれやりたい」と遊具に興味を示すと、Aちゃんは一緒に遊べるおともだち相手でも「私が先にやりたい」と我先に横取りしようとするのです。当然おともだちとぶつかります。支援者が間に入っても譲りません。しかしおともだちが諦めて先に譲ったりするとAちゃんも「え?いいの?じゃあ私ももういいや」と。このようなことが何度も繰り返されました。

ドレもコレも、こんなことしていたらそりゃクラスメートから嫌われるでしょ、と感じてしまうようなことばかりでした。

しかしAちゃんは仲良くできるおともだちを求めていたのです。誰かと仲良く遊びたいのに近付こうとすればみんなが自分から離れていくと苦しんでいたのです。

ならば何故こんな矛盾だらけの関りを自らしてしまっていたのでしょう???

まずAちゃんは、大人の決定や調停になかなか応じないお子さんでした。大人との関係の中では自分に決定権があると感じている様子が随所に見られました。その為活動の中でも自分勝手に振舞い、ルールを守り楽しさを共有することはほとんどありませんでした。それにより相手にも相手なりに色々な感じ方がある、自分の振る舞いにより相手に嫌われ拒否される可能性もあることを考えられずにここまで来てしまった様子でした。

しかしおともだちには興味がある、自分もみんなのようにおともだちと楽しく遊びたいという気持ちはムクムクと育っていきます。そこでAちゃんはみんなに自分を見てもらいたい・注目してもらいがために「相手を怒らせる」ことに執着したのです。

怒りは、いとも簡単にその対象への注目を誘導させる力があります。

幼いAちゃんはなんとしてでも自分を見てもらう術として、自分を少しでも気にかけてくれそうな子や大人に、その人が不快感を感じ怒りそうなことを繰り返し行うことを選んだのでした。

結果として一時的に相手はAちゃんただ一人に注目しますが、直後に激しい怒りと共に拒否されてしまいます。

そこでAちゃんは傷つき苦しみつつも大きな集団の中で埋もれ、安心して学校生活を送ることができなくなり不登校という選択をしてしまったのでした。

何故彼女が決定権を大人に委ねることなく小学生になってしまったかは別の視点による解釈が必要なのでここでは割愛しますが、その後にAちゃんは療育を通じて決定権を持つ支援者の元で少人数のグループ内でおともだちと好きな活動を短時間行い楽しさを共有することを繰り返し行いました。

最初は決定権を持つ支援者に抵抗を示すことはありましたが、どの大人も彼女の自己主張に耳を傾けることはしても決定権をAちゃんに譲ることはありませんでした。ルールもきちんと守らなければ一緒に活動出来ないし、一緒にやらない間はきちんと静かに待つように伝えました。ルールを守らなければみんなに注目してもらえない為Aちゃんはほとんどの活動になんだかんだと参加し、渋々な様子でしたがルールも守ることができました。

相手を嫌な気持ちにさせるような発言があれば「それはよくないことだ」とその都度注意したところ、発言後に「しまった」というような表情をしたり、やや不自然ながらも訂正や言い訳をすることも増えてきました。

活動の中で素敵な行動などが見られればAちゃんもおともだちも同様にみんなの前で褒めて評価し、お互いの良いところを見つけられるようにこっそりと働きかけました。

いまAちゃんは不登校を克服し小学校の少人数クラスに通っています。不登校になり始めたことがきっかけで相談支援の門をたたきましたが、それから再び学校に通えるようになるまでに何回か同じ季節が過ぎてしまっていました。

正直なところもっと早く、遅くとも人の怒りを買う=自分に注目してもらえるという経験学習がAちゃんの中に定着する前に療育の場にやって来ることができれば、もっと早く解決出来たのではないか、安心して穏やかに社会生活を送れたのではないかと思います。

もっと言えば幼児期に大人の決定権の元で社会性を育てることに注力すれば、むやみやたらと誰かを傷つけようとすることもなかったのではないかと・・・。

3歳頃には発達の遅れが目立っており、育てづらいという印象を持たれるお子さんでもずっとそれが続くわけではありません。

Aちゃんのように2次的課題が発生するまでに介入のチャンスはあったでしょう。

課題が固定化してからではそれを解決することは大変であり、その時点で「課題」ではなく「問題」として周囲から認識されます。

「問題」となってから且つお子さんの年齢が上がれば上がる程、本人は解決への試みに対して不安を感じ様々な形で精いっぱいの抵抗を示します。

解決するために膨大なエネルギーが必要ですし時間も掛かります。親も歳をとって気力体力が無くなっていきますし・・・。

小学校低学年の時に課題・問題に向かい合い始めたAちゃん。

いまもAちゃんは大人と共に対人関係の壁を乗り越える方法を学び続け、時に混乱しながらも精いっぱいご家族と学校と福祉の連携のもと頑張って学校に通っています。