「強み」「ストレングス」
障がい児・者支援の世界では、よく使われる言葉です。
本人の強みや得意なことを把握して、支援に活かしていきましょう☆と。
やもすれば、本人の苦手なことや課題・問題となる部分に焦点を当てられがちな現場。
しかし社会生活のなかで、そこばかり注目されてたら息苦しくなるし、みんなギスギスしてしまいます。
誰だって明るく前向きな気持ちで生活したいもん。
そのためにも自分で出来ることは本人が頑張って行い、それを周囲が応援したり見守るという環境はとても大事です。
本人が前向きに取り組む気持ちを支えるためにも、支援者はこの「強み」「ストレングス」をきちんと把握しておく必要があります。
もちろん「苦手・課題・問題」を把握することも重要です。
必要ならば助け合う。
誰にも等しく求められることです。
「強み」「ストレングス」と「苦手・課題」両方を上手く把握すると、いい感じでバランスが取れたりもしますしね。
どちらもなくてはならない視点。
そこで今回は、高校進学を控えた1番っ子(軽度知的・発達障がい持ち)を例に「強み」「ストレングス」を重点に、「希望・目標」やそれに向けた取り組みについてお話したいと思います。
会話はできている、らしい
1番っ子は、私とは会話をしません。
中一の半ばから全くしなくなりました。
これは「親」と「親がいる場」限定です。
2番っ子とは普通に話しているようですし、学校では友達や先生とも話せていると。
挨拶は苦手で担任の先生に促されて、やっと小声で出来るかどうか・・・といった感じらしいですが。
コミュニケーションの基本中の基本だから、さすがに挨拶はきちんとしてほしいなぁ。。。
剣道や空手では、稽古開始・終了のはやっているらしいです。
私はそれを見れませんが、本人証言や2番っ子が「1番っ子はね、お話してるよ〜」と教えてくれるので、なるほどそうなのかと。
社会生活ではきちんと話せているんだね。
ならいいよ。
だって私たちとは筆談やジェスチャーでやり取りできるもん。
毎日笑い合って過ごしている。
親子仲が悪いわけじゃないし、別にいいさ。
「挨拶」は苦手=課題
支援級三者面談でのお話です。
先生「登校して先ずは支援級に来ますが、挨拶がないまま普通級に行ってしまうことがあります。今朝は先生たちが気づかずに、アレ?1番っ子さんはまだ〜(・ ̫・)?ってなってしまったので、やっぱり挨拶はきちんとするように指導しますね」
そりゃマズイ・・・( ̄▽ ̄;)
挨拶は「自分来たよ」アピールになるし、その後のコミュニケーションをスムーズにもしてくれます。
やって損はなし。
社会生活を円滑&平和に送るための必須呪文みたいなものです。
私「挨拶くらいしなよー。小声でもいいし、まずは頭をペコリとかさー」
①「・・・・・・ ( ̄△ ̄)」
私の顔をじっと見るものの、無反応。
挨拶自体が苦手なのよね。
1番っ子にとって、積極的にひとに関わりにいくこと全てがNG分野です。
自分から声をかけに行くなんて (艸///Д///il!)
でも、これは覚悟を決めて頑張った方がいいよ!!
中学校では積極的な一面もある、らしい
お次は普通級の三者面談にて、若いお姉さん先生に言われた言葉。
先生「1番っ子さんは、照れ屋さんだけど積極的な面もありますよ」
ええ?そうなんですか?
先生「そばの席の子が欠席だったり不在だったら、自主的にプリントをその子の机の中に入れてくれるんですよ」
・・・そっか、それも積極的と評価すべき行動なのか。
目からウロコ •̥ ˍ •̥
相手が目の前にいない時は、そのひとに対して積極的に行動できる、ということですね。
お姉さん先生、素敵な視点をありがとうございます。
勉強になりました (◎-◎)/✎___カキカキ
遅刻やその理由くらい、自分で伝えなさい
八月、来年度から通う高校が無事に決定しました。
あれから一ヶ月ちょっとですが、合格者として高校に出向く用事が何回かありました。
正味一時間ほど滞在して帰って来ます。
詳しくは知りませんか、そのなかで先生となにやら簡単な作業をこなしているみたいです。
要は、生徒側の「入学前に自宅と高校を行き来する練習」と「不安の軽減」を図りつつ、先生側の「情報収集」をしているのでしょう。
入学までまだ半年近くあるのに、ようやりますねー。
ハード面は地味でこじんまりとした学校ですが、ソフト面は生徒たちの負担にならない程度にさりげなくドンドコいったるで〜という感じがします ( *ノ_ _)ノノ╮*_ _)╮アリガタヤ
ある日、高校の先生と電話でお話する機会がありました。
お世話になります〜とご挨拶。
その後は先生から
先生「1番っ子さん、よく頑張ってますよー」「言われたことはちゃんと理解してやっていますよー」
とお褒めの言葉を頂いちゃいました( *´꒳`*)
よかったよかった。
しかし電話を切る直前、ふと気になることを。。。
先生「前々回、何故か5分程遅刻してきたんですよー。でも落ち着いて席について、ちゃんと準備して、何事もなかったように参加できましたよー!」
先生は1番っ子が慣れない場所で上手くいかない状況に陥っても慌てず行動できていたと伝えたかったのでしょう。
ありがとうございます。今後もよろしくお願い致します。と電話を切りましたが
私「???????」
なんで遅刻したんだい???
そんな話、1番っ子から聞いていません。
高校では注意されることなく済んだから、自分判断でヨシとしたのでしょうか?
我が家から高校へはバスと電車で向かいます。
指定時刻に間に合うように、事前にGoogleマップで時刻表&経路を調べて行っていたのに。
公共交通機関の兼ね合いか、間に合う範囲の一番遅い到着でも20分前には着いていたはず。
それなのに指定時刻より5分遅れるって、要は予定より30分弱遅れたってことだよね?
「遅刻はよろしくない」という道徳は習得している人です。
「支援者がいないと欲求優先の行動をしてしまう。遊んでしまい、間に合わなかった」というタイプではありません。
なので1番っ子に率直に尋ねてみました。
私「前々回、遅刻したんだって?なんかあったの?」
①「φ(..)カキカキ(バスが事故渋滞に巻き込まれて遅くなった)」
・・・あ、そう。
それならいいんだけど。
・・・・・・・・
いや、まてまて。
全然よくない!!
遅刻しそうな時はね、その旨を親に報告して学校に伝えてもらうか、自分で学校に連絡しなきゃいけないんだよ。
小学校入学時から中学卒業まで、それこそ義務教育の頭から爪先まで、支援級所属の1番っ子。
支援級では毎日先生と親が連絡帳でやり取りをします。
おかげで家での様子や学校での出来事をお互いに把握しやすいです |•'-'•)وナイス!
それこそ本人そっちのけで親と先生が情報交換を日常的にしています。
しかし、高校にもなるとそうはいかず。
親と学校の心理的距離は一般よりは近いのでしょうけど、やはりお年もお年なので本人主体で日々を回させなければなりません。
中一の見学で高校の先生とお話した際に、「遅刻や欠席の連絡はできれば本人からさせてください。電話がベストですがメールでもいいです」と言われました。
これまでは遅刻・欠席の連絡は親がするものでしたが、義務教育が終了した暁には自分が責任を持ってすべきってことなのかな?
いちいち親に報告しなくていいから、自分で伝えて解決するよう行動しなさい、と。
自己責任☆報・連・相 v(*☻-☻*)v
高校の先生とは話さない?!
疑問に思いつつも、敢えて聞かなかったことを1番っ子に問いかけてみました。
私「高校の先生とお話できる?」
①「(ヾノ・_・`)イエイエ」
私「喋ってないの?」
①「(*꒪꒫꒪)( ._.)コクコク」
私「・・・( ˙-˙ )マジカ」
どーりで、先生は1番っ子の遅刻の理由を把握していなかったわけです。
5分程度なら「全員揃ったかなー?確認するよー。あれー?1番っ子さんが来てないなー?あー、来たきた」みたいな感じでおしまいだったのかもしれません。
受験の面接時は緊張でお話できず、筆談による返答を許してもらいました。
しかし面接官の先生に「ゆくゆくはお話できるようになろうね」とさりげなくチクリと言われ・・・。
私「あの高校に入学したいのなら、せめてお話はしなきゃね」
①「( ˙꒳˙ ; マヂデ?)」
中学校には、普通にお話できた小学校時代からの友達がいます。
だからなんとか「会話をする自分」を保とうとできたのでしょう。
それが知り合い0の高校ともなると・・・。
まぁ、喋れんわな。
親目線の希望・目標
1番っ子にどうなってほしいかって。
そりゃあもう、挙げればキリがありません。
知的指数もフツーで、普通級で授業を受ければ基本くらいは定着して。
自閉症っぽさもなく、みんなと楽しく、元気ハツラツで明るい青春を送ってほしい!
贅沢は言わん。
フツーでいいんです。
The フツー!!
でもま、ムリな。
マジそれ。
現実的には
いまの1番っ子を見て将来のことを考えると、せめて挨拶や会話は緊張せずにできるようになってほしい、、、
とは思います。
それが私の希望であり、支援計画書を作るとすれば「希望・目標」の欄にも書くかな。
可もなく不可もなくソレっぽいし?
でも、「希望・目標」って本来は1番っ子自身のものです。
1番っ子の希望、そして目標はなんなのでしょう?
「私の将来の夢は・・・」
夏休みの国語の宿題は、作文でした。
ざっと原稿用紙五枚。。。
ごごごご五枚!?
さすがにどう書けばいいのか分からないと、困り顔で相談されました。
相談と言ってもジェスチャーです。
それが分かるだけでも私はスゴいな、多分。
私「起承転結って言ってねー、まずテーマに対する自分なりの意見を簡潔にドーンと書いて、それについて自分の経験とかその時に考えたこととかを書いてねー」
①「(๑°⌓°๑)???」
・・・説明だけじゃ全然分からなかった模様(そりゃそうだ)。
これに沿って書いていきなとメモを渡す等して、そんなこんなで書き方を大雑把に教示しました。
少しして書き出した1番っ子。
一枚目の半分を書いて、その日はおしまい。
私「お母さんは何を書いたかは見ないよ。見られたらヤでしょ」
そういうお年頃だもんね。
と言ったものの
①「 (◍´꒳`)bᵒᵏ」
私「見ていいの?」
私に、ちょっとだけ書かれた一枚目を差し出してきました。
なになに?
私の将来の夢は自立をすることです。自立をすればきちんとした人間になれるし、誰にも迷惑をかけない人間になれるからです。私はそういう人間になりたいです。
そこには1番っ子の希望や目標がありました。
きちんとした人間になりたい?
迷惑をかけない人間になりたい?
1番っ子は普段から家族をさりげなく助けてくれます。
迷惑をかけるようなことなんて、滅多にしません。
自覚なき「強み」「ストレングス」
迷惑を掛けるどころか、支援がなくてもできることはいっぱいあるじゃないか。
- 朝は、自分で設定した目覚ましで起きてる
- 自分で朝食準備をして食べて、片付けまでして、持っていく水筒や給食小物の準備をして、バタバタと一人で登校していく
- (ギリギリ)遅刻しない
- どの授業も真面目に参加している(らしい)
- 先生や友達とは会話している(らしい)
- 現代っ子らしく、ギガ端末のタブレットは自力でスムーズに使える(らしい)
- 提出物はきちんと提出している(らしい)
- 必要な報告もきちんとしている(らしい)
- 部活の練習も引退まできちんと参加していた(らしい)
- 家庭でも学校でも、スケジュールを把握・管理して生活している(っぽい)
- 宿題も自分で把握し、夜に取り組んでいる
- 宿題がない時は、テスト前に提出を求められるであろう副教材のドリルに取り組んでいる
- 自分の夕飯の盛り付けはする
- 夕食後も皿洗いまで必ずする
- 洗濯物は自分で干して取り込みまでする
- 飼い犬をとても可愛がっており、毎日エサやりや散歩をしてくれる
- 頼めば、掃除機かけや風呂掃除、トイレ掃除だってしてくれる
- スマホゲームで暇つぶしできる
- 好きな番組の歌を聴くことが好き
- 2番っ子が困っていたら、さりげなく助けに行ってくれる
どれもこれもが、社会生活を1番っ子が1番っ子らしく送るための「強み」「ストレングス」です。
元々は人並みにだらしないところがあり、ボケーッとしているタイプ。
頑張っているじゃん。
中学生でこんなでも、自分はみんなに迷惑をかけていると思っているの?
年頃的に自己肯定感が下がりやすい時期ではありますが、もう少し自分自身がどんな人間かを知ってほしいです。
できることを維持する
手術をすると、翌日には病棟内を歩くよう促されることがあります。
膀胱留置カテーテルを入れていても、必要なくなれば直ぐに抜きます。
経管栄養を利用する状態でも、経口摂取できる分はするように促します。
これは、「できる能力は、できる状態を維持していく」ためです。
人は「できる」を中断すると、元の機能を戻せなくなってしまうことがあります。
しばらく寝たきり状態で過ごすと、筋力の他に心肺機能や消化機能等も低下します。
自力で排泄をコントロールせずに過ごしていると、我慢することもできなくなるし出したい時に出せなくなります。
水分や栄養を口から摂らずに過ごしていると、「飲み込む」という行為すら難しくなります。
誰もが普通にできると思っていたことが、何かを境にできなくなってしまう。
それは身体機能だけでなく、心理的な面でも有りうることです。
それでも、一人で全てを出来なくても、できる部分は自分で取り組めるように環境を整え「これはできる」を維持し、できない部分は支援する。
医療や福祉の世界ではそれが日々繰り返されています。
「できる機能を大事にして、これからも可能性を狭めることのないように、さらには広げられるように支援していく」
これは、いまある「強み」「ストレングス」を弱らせることなく維持し、未来にも活かしていくということです。
「親がいない場面なら話せる」強みが弱り始めている
様々な不安が重なり、しかしそれを抱えたまま踏ん張って社会生活を送り続けた1番っ子。
その結果、言葉を発することが苦手になってしまいました。
それでも私たちが居ない場所では頑張ってお話をして、私たちとは筆談やジェスチャーでコミュニケーションを取り、それぞれの場所で変わらず過ごしてきました。
それなりに楽しく過ごせることもあり、これからもそうなのだと思っていました。
現在は不安の根源から距離を置いて、平和に社会生活を送れています。
よく頑張ったね。
エラいぞ!
だから、それを「普通」にするのもあり。
この「普通」を認めてあげよう。
そう思って過ごしてきました。
しかし知り合いがいない「高校進学」をきっかけに「普通」が変化しようとしています。
「強み」「ストレングス」だった「先生と友達とは会話している(らしい)」の維持は、このままでは難しいかもしれません。
目標変更
「強み」「ストレングス」は、現在と変わらずにこの先も、本人が本人らしく前向きに生きていくために必要なものです。
支援者はその存在を「これは素敵な長所」「社会生活の役に立つ」と認識し、「どう活かすか」を考えます。
しかしまさかそれが、「途中でいとも簡単に崩れてしまう可能性」があるとは。。。
「揺るがない」からこその「強み」「ストレングス」だと思っていましたが、実際はそれ自体が非常に脆いことだってあるのです。
私が掲げた目標は、「せめて挨拶や会話は緊張せずにできるようになってほしい」。
これは、現状の「強み」「ストレングス」と繋げるにはやや難のような気がします。
この状態で「努力せよ!」って言われても辛いでしょう。
それに「私が掲げた目標」って言っても、やるのは1番っ子ですし。
何を目標として自己実現するために努力するかは、本人が決めること。
作文に書いた「自立したい」という「自分自身の目標」はそのままで良しです。
現時点での目標としては「高すぎる(×_×)」と改正する必要もないし、私にそんな権利はありません。
数年先を見据えて自己実現への努力をできるように、親として精一杯サポートはするけどね(๑•̀ᴗ- )⋆✩
そう、親として支えなければなりません。
いままで親の横でスクスク育ってきた子どもが、こちらに背中を見せて社会に向かって歩き出そうとしているんです。
スムーズに、自分でできる・自分らしい高校生活を、自他共に認められる形で送れるように、親の希望・目標は変えましょう!
私の希望
- 安心して高校生活を送ってほしい
- 中学のように、高校でも友達や先生と会話をしてほしい
- 遅刻・欠席の報連相は自分でできるようになって〜
となれば、自ずと私がすべきことも見えてきます。
私の目標
- 今後も高校に出向く用事や、学園祭等の行事があるときは積極的に参加させる
- 高校では話しかけられたら簡単な返事でもいいから答えるようにと、日頃からやんわりと伝えておく
- 遅刻・欠席に関するメールの仕方・適切な文章の書き方を教える
こんなところでしょうか。
結局のところ親の目標って、「子どもが外の世界で困らないように、何を促し教えるべきか」なんですよね。
直ぐにできることから始めよう
とりあえず「遅刻・欠席連絡のメールの仕方・適切な文章の書き方を教える」は直ぐに取り掛かれそうです。
1番っ子は中学校入学と同時期から【トーンモバイル】 という(マイナーな)自分スマホを持っているので。
三年目ですが、持たせた所感としては子どものスマホデビューにはちょうどいいものでした。
- 利用時間制限によるネットやりすぎ防止機能
- 動画は基本1ギガ/月しか利用できないから、それによるやりすぎ防止も期待できる(検索は無制限なんですけどね)
- アダルト系等へのアクセス制限も可能
- アカン系の自撮りはAIが撮影ブロックしてくれるから、いつの間にかネット犯罪の被害にあっていたというリスクを減らせる
- バスや電車に乗ったら親に通知が来るから、子どもだけで出かける時には心強い
等などの機能はとても心強いです。
1番っ子がOKならば、あと三年は使いたいなぁ。
LINEやメールの自分アカウントを持っているみたいなので、遅刻・欠席の連絡方法について早速教えてみました。
○○高校先生方
いつもお世話になっております。
本日、カレコレこういう理由で遅刻(または欠席)します。
よろしくお願い致します。
⚫年 1番っ子
メールで伝えるくらいなら、これくらいはそろそろできるようになってもいいんじゃない?
せっかくスマホを持っているんだから、適切な社会生活に向けて役立ててね!!
まとめ
子どもが成長していく姿って、本当に見ていて楽しいものです。
この感覚は、障がいがあろうがなかろうが関係ありません。
これからも、1番っ子も周りにいるひともみんなで楽しめる成長を促していけたらな〜、と思いつつ、今回はここで〆させていただきます。
今回も長々とお付き合いをありがとうございました
тнайк ―+。:.゚ヽ(´∀`。)ノ゚.:。+゚―чоц!!