年齢=障害者家族歴な主婦のドタバタのほほん日和

重度自閉症者のきょうだい児として育ち、結婚後は軽度知的障害児二人の母になりました。障害支援分野でNsをやっています ☆

ADHDっ子の特性&将来の就労の大事なポイント

前回、1番っ子の話と共にADHDについて書きました。

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私はお仕事でADHDを持つ方や親御さんとお話ししたり、園や施設に様子を見にお邪魔することがそれなりにあります。

と言うか、この数年でADHDに関する案件は激増しました。
私は看護師免許も持っているので、配属当初は医療ケアが必要だったり難病を抱える方を中心にした業務をする予定だったのですが・・・。

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そんなこと言ってられないくらいの状況です。
ほぼ毎日ADHD中心に仕事が回っていると言っても過言ではありません。
まぁ、結果的には精神科系にも触れる機会を持つことができ、良い勉強となっています。
おかげで自分のネットワークも広がりました。
近年、ADHDに対する情報が急激に広がり、世の中にその存在が知れ渡りました。それと同様に支援の必要性が叫ばれるようにもなりました。
しかし支援という名のもとで少々ズレた対応が散見しているように思います。
お子さんの場合は特にです。かなり、非常に、顕著です。
最近、モンペの方々のご活躍がめざましいです。ネットを駆使したり、時にマスコミも巻き込んで「継続して第三者がお子さんへの成長に関わること」への不信感を増長させています。
おかげさまで園や学校の先生の中には「教育よりも親の言うことを優先して、取り合えず今年度を乗り越えよう」という雰囲気が漂っています。
「親を静かに満足させる 〉児童への教育」です。
当然ながら児童福祉の現場もそうなっています。
ただ、どの親御さんも自分のお子さんのことを完全に理解している訳ではありません。
お子さんはみんな同様に、家庭とその外とでは異なる姿を大なり小なり持っています。家では大人しいのに学校に行くとやんちゃっ子なんて珍しくありません。
園や学校のように、家庭とは異なる大きな集団の中で我が子がどのように行動しているかなんて、想像できない方も多いでしょう。
ましてや課題を持つお子さん達の対応をした経験やそれに基づく客観的な知識や能力を持っている大人なんて、親御さんも含めて世の中にはほとんどいません。
先生や福祉現場のベテランさんはそれを持っています。尚且つ少ない人員数で、スケジュールに添って一度に複数のお子さんを指導する経験を有する数少ない人たちなのですが・・・。
その人たちに相手に「うちの子にはこういう対応をしてください」と現場の状況や他のお子さんの存在を堂々無視するような要望を上げる方が、最近目立ちます。
ハッキリと「自分の思い通りにできないと感情のコントロールが難しくなってしまう子なので、なんでもこの子の言う通りにしてください」と言う親御さんにも会ったことがあります。
お子さんが自宅で泣こうものなら、「学校や施設で何かあったんですか。だって家でいま泣いてるんです。家ではストレスないようにしているのに」と動揺した親御さんから速攻問い合わせがあることも珍しくありません。こういうときの親御さんは、お子さんが「社会で安定して生活する術を身につける」ことよりも「日常茶飯事の何気ないことでも子どもが嫌がるなら回避させて」と主張することが多いです。支援する側もやりづらいですよ。「安定した社会生活」≠「ストレスがないように配慮してもらう」なのに。

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でも「うちの子には〇〇の時は▲▲の対応を」という要望、特性を正しく捉えて伝え方さえ間違っていなければ自閉症スペクトラムでは正解の場合も、勿論あります。
ただADHDの場合は、課題となる特性を増悪させ将来に渡り社会生活を困難にする危険性が高いです。
現代はマスコミやネット上など身近な所でも障がい児支援に関する様々な情報が溢れています。しかし当然ながらどのお子さんに対しても、個々の特性や障がいの種類を無視してみんな同じような対応をすればいいわけではありません。そのため情報を細分化・精査してから実行する必要があります。支援する側の方たちはよく分かっていらっしゃるでしょうが。
相談や訪問業務を通じて第三者視点から教育や福祉の現場を見ていると、直接支援に当たっている方々の心痛や苦労は計り知れないものと思います。

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ADHDの特性

前回の記事でも書きましたが、ADHDは不注意・衝動・多動性により社会生活に困難をきたす行動障害の一つです。
①人は赤ちゃんの頃から情動をグッと堪えことが出来る

②情動をグッと堪えることにより、その間に「どうすればよいか」状況から判断しようとする

③ADHDの人は、①のグッと堪える瞬間を持てないために状況に合った行動は何か判断することが難しい

④そのため場にそぐわない安易なことや嫌なことから逃げだすような行動をしてしまう

⑤また、それにより周りの人から忠告されてもその場で考えや行動を変えることは難しい

⑥そもそも人は、他人の行動を見たり自分の経験から学ぶことによって「今後同じような状況になったとき、自分はどう行動するべきか」を考えることが出来るようになる

⑦しかしADHDの人は「本来ならばどう行動することが良いのか」判断し成功した経験の少なさから 「今後同じような状況になったとき、自分はどう行動するべきか」考えることがなかなか出来ない。その為いま目の前で困難に遭遇しても、情動をグッと堪えてより良い判断をすることはせず情動のままに行動しがちである

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この「情動をグッと堪え」「様子を伺い」「その後の行動から得られるメリット・デメリットを考えて取り組む」ことが苦手という特性の為に、「(周囲の迷惑になろうが)やりたいことはやる」「(やらなければならないことでも)やりたくないことは拒否や誤魔化し、逃げる」行動をしてしまいます。
それにより「ルールを守らない」「我が儘」「自分勝手」な人間として各年代で周囲から敬遠される存在となりがちです。
しいて言えば、幼児期は「ちょっと元気過ぎる子」程度の認識で済まされていることが多く、人懐っこい性格もあって大人からはなんだかんだで可愛がられたりします。そのため衝動行動による事故やケガなどの危険性以外には注目が集まりにくいという特徴があります。それ故に支援介入の時期が遅れてしまうことも・・・。
しかしお子さんの癇癪や乱雑な様子や行動の頻度から、家族の中には何らかの兆候に気づいている人もいるでしょう。孤立化や不安・育児疲れを抱え込むことにより虐待発生の可能性も高まります。

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年代別ADHD症状

以下に、小学校入学以降~青年期までのADHD症状の表れ方を記します。
全てが誰にでもありがちなものです。しかしADHDともなると、症状により生活に支障をきたしたり周囲に多大な迷惑をかけるようになります。
小学生
不注意
忘れ物が多い、宿題をしない、よそ見が多い、興味ない作業は安易で雑、連絡帳やノートがとれない、ケアレスミスが多い
衝動性
道路への飛び出し、軽はずみで唐突な言動や行動、ルール違反、授業中に指される前に発言する、他児の気を引こうとしてトラブルになる
多動性
授業中の立ち歩き、静かにしなければならない場所でも大声で話す、多弁で騒々しい、むやみに走り回る、興味の向くままに物を乱暴に扱う、ソワソワモジモジ
    ↓↓↓
幼児期に比べ、周囲から批判や叱責をされることも増えてきます。それにより情緒優先で衝動的に、激しい反抗や暴力など一見幼稚ともとられる行動をしてしまいます。また不安や抑うつによる不登校やわざと身近な人を困らせるような行動(受動攻撃)をするようになるなどの二次障害が発生しやすいです。

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中高生
不注意
忘れ物・失くし物が多い、約束も忘れる、ケアレスミスが多い、うわの空に見える、作業から脱線する、整理整頓が苦手、時間管理も苦手でやるべきことを後回しにする
衝動性
軽はずみな行動やルールからの逸脱、唐突にキレる、相手の話を遮り話し出す、順番を待つ状況を避けようとする
多動性
モジモジ・ソワソワは減るがジッとしていなければならない状況は苦手で避けようとする
   ↓↓↓
これまでの経験から自尊心が大きく低下します。自信のなさや抑うつ傾向が強まります。それにより受動攻撃性が高まり、不登校やひきこもり傾向が強くなることも。また、ネット・ゲーム依存のリスクも高まります。また非行集団への接近が生じる可能性もあります。

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青年期以降
不注意
中・高生時代と同様。しかしこれまでの経験から自分の特性に気付いたり違和感を持っていることが多い
衝動性
こちらも中高生時代と同様。しかし社会の広がりから、これまで以上に対人関係でトラブルになりやすい
多動性
こちらも中・高生時代と同様。しかし社会人ともなると仕事中の落ち着きのなさから就労に困難を感じることが多い
   ↓↓↓
自尊心の低さや打たれ弱さ、抑うつ傾向が目立ちます。依存傾向が強まりひきこもりに発展しやすいです。反社会性やパーソナリティ障害兆候も見られるようになります。

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https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=39より引用

ある程度成長すると(大体12歳頃から)、「衝動性」「多動性」は軽減されます。これは脳の発達により「衝動性」「多動性」を自分自身で抑制できるようになるためと考えられています。または支援・指導を少しずつ重ねて、自覚を持ち適切な行動を獲得した結果であるのかもしれません。

反対に社会生活の中で周囲から批判されたり拒否されるという本人にとって強烈に辛い経験をしたことによる可能性もあります。それを記憶し何がいけなかったかを考え、行動を学習することにより抑制が可能になったとも考えられます。

また⇓⇓⇓の研究結果でも証明されていますがADHD児の不注意症状は、周囲との関りが後々に大きな影響を及ぼします。( 研究内容の詳細は論文をご覧ください)

 ADHD 者の示した注意障害は,外部からの働きかけにより改善可能であり,統合失調症の注意障害とは異なっていることがうかがわれた。https://researchmap.jp/?action=cv_download_main&upload_id=133314より引用

成長につれて特性を自覚することにより、不注意対策として「スマホアプリを使ったスケジュール管理」など、本人に合った管理行動が見られるようになることもあります。

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しかしそれと引き換えに思春期あたりから何らかの二次障害や症状が目立つようになります。具体的には「自尊心の低下」「反社会的行動」「直接・受容的攻撃行動」「抑うつ」「ひきこもり」「ネット・ゲーム・アルコール・特定人物などへの依存」です。これはADHD故の症状ではなく、それまでの生活環境や経験から引き起こされるものです。
つまりADHDの症状が成長と共に軽減する可能性があるとしても、幼少期から二次障害発生予防に努める必要があるのです。
発達特性は軽減することはあっても消失するものではなく、 適応上の問題は思春期まで持続することが多いといえる。とりわけ思春期は新たな発達課題に直面して心理的課題が複雑になるなか、それまでの逆境体験による二次障害も重な り、深刻な行動上の問題や精神症状を呈する場合があることが指摘されてい る 1)2)。思春期発達障害者の深刻な不適応を予防し、適応力向上を促すことは、その後の長期的な社会適応につなが ると考えられることからも、具体的な支援アプローチの検討は取り組むべき課題と考えられる。

https://www.my-kokoro.jp/books/research-aid-paper/vol53_2017/pdf/mykokoro_research-aid_paper_53_08.pdf#search='%E6%80%9D%E6%98%A5%E6%9C%9F+%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E5%85%90'より引用

 

ADHD故に苦手なことと将来への影響

先程も述べましたが、ADHDは「情動をグッと堪え」「様子を伺い」「行動から得られるメリット・デメリットを考えてから取り組む」ことが苦手です。不注意・多動・衝動性はこれにより説明できます。
つまり目先に気になることがあれば、周囲の状況や迷惑、それを優先したことでどうなるかなどを考えずに突っ走ってしまいがちです。逆にやらなければならないことでも自分が嫌だと思えば、周りから今後どんな評価をされるかなどは考えずにひたすら「やだ」「やりたくない」と主張し押し通そうとします。
ADHDを持つ人は人懐っこい性格で、みんなと仲良く友好的に過ごしたいと思っていることが多いです。しかし結局は情動・感情を優先して周囲に批判されたり拒まれる行動を繰り返し、孤立化してしまいます。
時々好きなことには人一倍凄い集中力を発揮できるという意味で、「過集中」なる言葉を使われることもあります。
これ自体も、好きなことだから「やりたい」という情動・感情が優先したことにより生じます。それにより周囲からの声掛けや状況に気持ちを向けられない様が、「並外れた集中力を持っている」ように見えるのです。
もしこの特性を全面に生かすことが出来る職業があれば、そして本人がそれに就くことが出来れば、素晴らしい業績を上げることが出来るかもしれません。

しかし世の中にそんなうまい話は転がっていません。

就職すれば、先輩や上司から仕事を教わります。そのため「教わり、取り組む姿勢」は非常に重要です。
話をきちんと聞き、落ち着いて行動し、間違いをしないように気をつけなければなりません。チームワークも求められます。ある程度の期間が経過すれば、自分なりに業務内容を管理・行動できるようにならなければなりません。
いずれは教える側に就くこともあるでしょう。その際はさらに情動や行動をコントロールし、相手や状況に気を配り適切に判断することを求めらるようになります。
これは就職後に突然始まることではありません。 
中学校に入学すれば先輩・後輩がある環境になります。部活に所属するお子さんもいるでしょう。定期テストもあるし、三年後には受験もあります。
思春期頃からADHDが苦手とする状況が日常生活にあふれるようになるのです。上記引用の「深刻な行動上の問題や精神症状を呈する場合がある」のは、これによる部分もあるでしょう。
しかしこの状況を上手く生かせば学校生活自体が「色々な人に関わり、教わり、取り組む練習」となり、将来の社会生活に役立たせることができます。
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今後就労を希望したとしても、企業に選ばれなければ就職はできません。選ばれたところで本人が職場に定着できなければ、生活は不安定なものになってしまいます。
企業は福祉施設ではありません。
一般雇用にせよ障がい者雇用にせよ、職員を支援すること自体が仕事ではないのです。企業としての本来の業務を行い業績を出さなければ、健全に存続できません。また「業務または職場が合わないから辞めたい」と申し入れる人がいれば、それが障がい者雇用による職員であろうが退職を認めなければなりません。
障がい者雇用を謳う企業は雇用の前は「本人に合わせた配慮をする」と言ってくれます。しかしそのような企業でも「話をきちんと聞き、落ち着いて行動し、やるべき業務に取り組み、間違いをしないように気をつける。さらにはチームワークもとれ、自分なりに業務内容を管理・行動でき、安定した雇用が可能な人材」を当然求めるし、優先して選ぶのです。

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結局はいずれ症状が軽減する可能性があるとしても、健やかな成長や精神衛生、今後の人生の為にも早期から社会生活に適応するためのトレーニングを積むように促す必要があるのです。
 

子どもの頃からやった方がよいこと

すなわち早期に(遅くとも小学生のうちから)、「情動をグッと堪え」「様子を伺い」「行動から得られるメリット・デメリットを考え」「取り組む」練習をしていかなければならないのです。
もっとはっきり言ってしまえば、我慢したり周りに気を使ったり、後々のことを考えて行動したりやるべきことはやるということをしっかり教えてほしいです。

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「ADHDだから難しいんです=周囲が理解し、この子に合わせてやってほしい」ではいけません。
こまめに難易度が低い課題に取り組む習慣を身につけ、成長を見守りましょう。
取り組める難易度が上がったり時間が伸びたりすれば、周囲がそれを認め褒めることが大事です。
元来ADHDを持つ子は、明るく人懐っこい性格であることが多いため身近な大人から褒められることを素直に喜んでくれます。この喜びが純粋な力となり、適切な行動の強化因子に繋がります。
これを日常的に行っていくことにより
①面倒なことでも取り敢えず取り組む
②取り組む過程や結果を褒められる
③一緒に取り組んだり評価してくれた人の言動や行動から学ぶ
④学びを生かし、より作業の出来が向上する
⑤頑張りが認められる。褒められる
⑥認められる・褒められる喜びを積むことにより今後も頑張ろうと思い行動する 
が可能になります。段々慣れてくれば、②の過程を一緒に取り組んでいる人と楽しむ余裕も出てきます。
 

ここが変だよ、現代社会

現代社会は、「課題や障がいを持つ人の気持ちに寄り添うブーム」の真っ最中です。
寄り添うとは相手の気持ちに共感し同調するという意味があります。

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本来は、困難に遭遇し精神的にまいっているお子さんに対しては「まず寄り添い困難を理解して本人がそれを乗り越えられるように支えてあげましょう」という考えだったはず。

しかし最近では、何故か一部で「理解をする⇒子どもが落ち着いて過ごせるように大人が察して合わせる」という考え方に変わってしまいました。
「コントロール困難な情動・感情を優先」に尊重し、みんなで平穏な社会生活を送ろうなんて無茶苦茶な考えです。っていうかこの考え方、相手(支援者や周囲の人)のことなんてどうでもいい、とにかく自分第一!ってことですよね。
そんなに世の中甘くありません。みんな色々な気持ちに揺れ動きながらも精いっぱい自分で感情をコントロールし、日々を送っているんです。
その中で支援者側は求めに応じようとします。純粋に相手のためだと思っている人もいれば、クレーム回避のために取り敢えずそうしている人もいます。
どちらにせよ結果的に振り回され疲れるだけです。

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本人や周囲の人が安穏に生活を送るためには、お互いが精神的にそれなりの安定を保つ必要があります。
だってそうじゃありませんか。上司や先輩、はては友達やパートナーがすごい気分屋さんで、しょっちゅう突然キレたり泣きわめいたり意味不明な八つ当たりをしてくる人だったら、いずれは誰も近寄らなくなりますよね。まぁ、共依存みたいな関係が確立できる相手ならそばにいてくれるかもしれませんが・・・。健全な人間関係上では無理ですね。
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これは障がいがあろうがなかろうが関係ありません。また障がいの種類が知的だろうが発達だろうが、精神だろうが、身体だろうが同様です。逆に重い障がいを持っていても情動・感情が安定している方ほど、自然と周囲に人が集まりす。そして支援されやすいです。「一緒に〇〇しよう」というお誘いに、ある程度でも応えられるなら尚更です。
それなのに子ども時代に「コロコロ変わる情動・感情」に合わせてもらえる、自分は我慢をしなくてもよい環境を本人や親が求め「支援」の名のもとに与えられれば、その子は将来どうなるでしょう?
脳が発達し便利アイテムなどを使用することにより各症状が軽減することは十分に期待できます。しかしそれでも二次障害のリスクは残ります。ましてや「自分がヤダと言えばやらなくてよい」「周りが合わせてくれるから些細なことでも我慢する必要はない」「情動・感情のままに振舞ってよい」環境で育ってきたお子さんが、大人になって順調に社会に適応できるとは到底思えません。
ここまで来ると障がいの有無も関係ありません。そんな都合の良い夢物語のような育児なんて、あり得ないんです。
でも最近はこのような夢を見た末に、「こんなはずではなかった。どうしたらいいんですか?」という相談が増えています。また「夢物語の真っ最中」という親子にもよく遭遇します。
日本の将来はどうなってしまうんだろう・・・・

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ADHDのお子さんに必要な支援は、情動・感情が乱れないように周囲が気をつけることではありません。
社会生活の中で情動・感情が乱れそうになっても、自力でコントロールし行動できるよう成長を促しつつ二次障害の予防に努めることが第一であり最重要です。

成人期の ADHD 支援の目標としては,短期的には ADHD 症状や併存する不安症状や抑うつ症状の低減であるが,長期的には症状の改善を含めた生活上の困難さを可能な限り緩和すること,あるいは患者の潜在能力を最大限発揮できるように補助することである(Weiss, Safren, Solanto, Hechtman, Rostain, Ramsay, & Murray, 2008)。

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他のサイトでも同様に言っているプロがいますね⇓⇓⇓。分かりやすく説明されているので詳細はそちらをご覧ください。

重要なポイントは、理由の是非よりも、Sくんが自分で感情のコントロールができるのを重視することです。働きかけの目的は、安定的な感情へと導くことです。大人が理由の是非にとらわれると、先ほども述べましたが、子どもに振り回されてしまいます。

http://www.hattatsu.or.jp/senmon/adhd08.htmより引用

先生や支援者の中には、「今日はどんな壁にぶつかりお子さんが困っていたか」連絡帳などで教えてくれる方がいます。教えられる側は良い気持ちはしないかもしれません。「あれもこれも出来ない子だって言いたいんでしょ」「うちの子が困らないように気を付けるのが仕事でしょ」と思う方もいるかもしれません。実際、過去にそう愚痴っている方もいました。
しかしこの支援者たちはお子さんの困難に一生懸命向き合っているのです。どうやったらこの壁を乗り越えられるか、親御さんだからこそ分かることがあったら是非教えてほしい、一緒に考えていきましょうというメッセージを発しているのです。
 

家庭で出来る「情動・感情をコントロールする練習」 

ADHDの方は、長期的な課題に地道に取り組むのが苦手です。たとえば、 

 

・3年間かけて単位をとって高校を卒業すること

・資格取得のためにコツコツ勉強すること

・地道に貯金して大きな買い物をすること

・同じ会社で少しずつ努力して信頼を得ながら昇進していくこと

 

などにはあまり魅力を感じません。そのため、こういった目標がなかなか達成しにくいのです。

反対に、ぱっと結果の出るものに関しては、報酬に魅力を感じるため、大きな成果を残すことができます。

ですから、ADHDの方が、長期的な努力を要する課題に取り組むときには、最後に大きなご褒美を設定するのではなく、こまめにごほうびを設定してモチベーションを保つ工夫をすることが必要です。

合言葉は「遠くの大きなご褒美より、少しでいいからすぐご褒美を!」です。

 https://www.asahi.com/articles/SDI201510308908.htmlより引用

⇧⇧⇧にあるように、ADHDを持つ人は、コツコツ時間をかけて努力し目標を達成することが苦手です。 

そのため小学校1~2年生頃は成績が良いお子さんも、小学3~4年生頃から学校への拒否感が強くなる傾向にあります。

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特に何があったわけでもなく、ただ単に「なんだか学校が面倒くさいから」と言うにわかに信じがたい理由で不登校になる小学生もいます。本来小学校って行かなきゃいけないものだし、そんな理由で「行かなくていい」という選択肢があるなんて・・・

☝☝☝のお子さんは、それまでに人間関係や集団生活で困難を抱えてはいました。それでもお友達もいて成績も運動神経も良く、なんとか普通級に所属し通うことはできていました。しかし国語の授業では板書が増え、漢字も画数や覚える量が増え、算数はパッと見で解ける問題が少なくなり、社会や理科では時間をかけてグループワークをする機会が増えたことなどを「面倒くさい」と感じるようになり、4年生になる頃には決定的な不適応状態となってしまいました。

「いちいち自分で書いたり考えたりするのはヤダ。だからお母さんに(先生へ)電話してもらったの。そうしたら自分だけ(板書を)ノートに書かずにデジカメで撮ったプリントをもらえるようになった。宿題も(自分だけ)しなくてもいいってしてもらった。それなら学校に行ってあげるって言ったよ。でも(学校では)ヤダって言っても教科書の問題を考えようって言われるし、分数の通分が面倒くさいからやっぱり行きたくなった。またお母さんに電話してもらおう。じゃなきゃ行かないから」と相談時に、お母さんの横で本人は言っていました。

このお子さんのランドセルの中は、A4サイズにプリントアウトされた1ヶ月分もの板書写真や未記入の宿題プリントがぐちゃぐちゃの状態で入っていました。

確かにADHDを持つお子さんの多くは不注意症状故に板書が苦手です。そのため授業後にまたは帰宅後に板書の写真を見て、こまめに休憩を入れたりしながら書き写す練習は有効です。

しかし上記のお子さんの場合、「板書をせずに写真に撮って手渡す」という配慮で終りました。結果、形ばかりの【支援】により「自分はみんなみたいにやらなくてよい」「ヤダって主張すれば配慮される」という認識を本人に持たせてしまいました。

元々成績優秀なお子さんでしたが、高学年になるとあっという間に先生が授業で何を言っているか分からなくなってしまいました。またお友達や先生から「一緒にやろう」と誘われても興味がないことには間髪入れずに「ヤダ」と即答したり一緒に遊んでも自分が有利にならなければ怒りだすことが多かったために、段々と誰からも声を掛けられなくなってしまいました。当然ながら授業も休み時間も給食も掃除の時間も、学校にいる時間全てがつまらなく価値ないものになってしまったのです。

初回相談後も会う度に、「学校に行かなければ家でずっとゲームをしていられるのに。将来は働かなくても金持ちになってゲームして暮らす」とよく笑顔で私に言っていました。そうこうしているうちに、5年生頃には身体が親御さんよりも大きくなり力も強くなりました。それまではジタバタして嫌がる本人を親御さんが車に乗せて学校まで連れていき車からなんとか降ろして先生に引き渡していましたが、遂にそれもできなくなってしまいました。

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話を戻しましょう。

情動・感情をコントロールし、誘われたことに取り敢えず応じてみたり長期的な課題に地道に取り組むめるようになるためにはどうしたらいいでしょうか?

おすすめな練習方法は2つあります。

まず一つは「お手伝い」です。

家事ってめんどくさいです。毎日毎日終わりがありません。そのためお手伝いを頼むと「えー、ヤダ」と即答されるでしょう。

なので最初は時間が掛かる料理や掃除は避けます。やる前から面倒だと感じるだろうからです。まずはゴミ捨てや配膳など短時間で出来る単純な作業から始めましょう。

人懐っこいADHDのお子さんは褒められることが大好きです。

お手伝いをして親御さんから褒められたり感謝されたり、みんなから注目されればされる程、意欲も増します。嫌々乱雑に行っていたことも次第に丁寧に取り組むようになるでしょう。段々と自分の洗濯物を干したり自分が使用した食器を洗うようにも促し、取り組んだ後はその都度称えます。毎日お手伝いを促しながら一年、二年と時間をかけて「頼まれればやれる家事」を増やしていきましょう。自己管理能力も上がり将来に向けて生活能力もつくし、一石二鳥です。

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二つ目は「勉強」です。

お手伝いは主に家庭の中で強化できる練習ですが 、勉強は家庭でも学校でも褒められ強化できるチャンスがあります。

別に難しい問題をスラスラ解けるようになることを目標にする必要はありません。

今回の目的は「情動・感情をコントロール」する練習です。

ADHDのお子さんは、コツコツと努力を必要とする勉強が大っ嫌いなことが多いです。

家庭では現学年に拘らず、まずはお子さんにとって難易度が低い問題をコツコツ解くように促しましょう。基本問題に取り組む経験を積み重ね、少しずつ学習を進めていきます。

多動症状があるお子さんは、学習中に着席していてもモジモジソワソワ不自然な動きをすることが多いです。ちっとも集中していないように見えます。しかしこの行動は「なんとか頑張って問題を解こうとしている気持ち」が行動となり表現されているのです。「ふざけてないで集中しなさい」なんて注意せずに、やりきれたら大いに褒めてあげてください。機会があれば学校の先生にも、お子さんの日々の努力を伝えてあげてください。先生に褒められれば自信もつきます。自尊心の低下も防げるし学習に前向きになるチャンスとなるでしょう。

通信教育のデキタスはそれまでの学年の学習にも自由に取り組め、全体的に簡単な基本問題ばかりです。そして短時間で出来るように単元が細分化されています。

また問題を解いたり、毎日取り組むことによりポイントも貯まります。貯まったポイントは様々な景品に交換することが出来ます。

この景品こそがADHDが苦手とする「遠くの大きなご褒美」です。

毎日短時間でも自分が出来る基本問題にコツコツ取り組むことにより、その行為自体を褒められ行く行くは景品までもらえるのです。

初月無料キャンペーン中だったので、我が子には「取り敢えず2ヶ月やってみよう」と言ってやらせてみました。最初は毎日はやりませんでしたが、2か月ごろには当時の学年の算数に対する苦手感が大分和らいだように感じました。

基礎学力も強化できるし、こまめに努力を積み重ねる練習にもなります。

お手伝いにしろ勉強にしろ、「こまめに努力する」「簡単なことから色々挑戦してみる」経験は将来必ず役に立ちます。

「コツコツ努力すれば成果が出る」「練習を積み重ねればスキルが向上する」といった姿勢も,実は遅延報酬に対する期待に支えられている.ここに弱みを抱えていることが理解できれば,ADHD のある人への動機への支援は考えやすくなる.課題の途中で声をかけてもらったり,応援してもらったりするなど,待つための支援を受けながら課題を達成し,結果として
報酬を入手できた経験を重ねていく中で,遅延報酬に対する反応が改善し,いずれは月給やボーナス,昇給などの週単位,月単位で遅延した報酬を動機として活用できるようになれば,それは就労を支える大切な基盤となる.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/59/5/59_429/_pdf

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「簡単な問題にも取り組むことが難しい」「すでにネットやゲームへの依存が顕著」というお子さんには、子ども達に大人気のゲームを通した学習も良いと思います。

とにかくお子さんが少しでも抵抗なく取り組める勉強の形態を見つけ、コツコツ取り組む習慣を身につけましょう。

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まとめ

いずれはお子さんも社会に巣立ちます。

ずっと親が面倒を見続けることは不可能です。

お子さんが前向きに社会の中で生きていけるように、どうかいまのうちから一緒に練習を重ねていってあげてください。

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